環境問題が注視されている今の時代の家具選びとは?
2015年にSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)、いわゆるSDGsが国連サミットによって採択されました。これ以降SDGsはメガトレンドとなり、消費者のサスティナブルな商品に対するニーズも高まっています。
下のグラフは住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォームRoomClipの調査です。こちらを見るとSDGsやサスティナブルやエコな暮らしといったSDGs関連の投稿が伸びていることがわかります。
出典:RoomClipユーザーの6割がSDGsを意識して行動を実践。「エコな暮らし」「ロハス」など過去の取り組みが土台に|RoomClip住文化研究所
以上の結果から消費者の家具、ひいては住生活全般における環境配慮へのニーズの高まりを窺い知ることができます。
高級家具ブランド各社が取り組むサスティナブル
SDGsの大きなトレンドを受けて、各高級家具ブランドもSDGsを意識した商品の販売を行っています。
カールハンセン&サン
出典:Y-チェアCH24 Carl Hansen & Son |【SEMPRE.JP】公式通販 家具・雑貨・インテリアショップのセンプレ
カールハンセン&サンの商品を購入したことがある方は下のようなマークを見たことがあるかもしれません。
これはFSC認証を受けた製品だけがつけられるロゴマークです。このロゴがついている製品は環境や地域に配慮して育てられ、きちんと管理がなされた森林の木を使った製品であることを意味しています。
同社は2025年までに使用する木材のすべてを環境認証を受けた木材のみにすることを目標に掲げています。
同社の環境配慮に対する姿勢は木材の利用方法にも表れています。家具の製造段階ではどうしても端材が生じてしまいます。そのような中で同社は大きめの端材はカッティングボードなどの小物のインテリアへ加工しています。さらに、細かい木片やおがくずは地元ゲルステッドの地域暖房設備の燃料として、カール・ハンセン&サンの工房や地域400世帯以上の暖房に使われています。
カッシーナ
出典:LC2(ソファ/オットマン) Cassina | カッシーナ・イクスシー
続いてはカッシーナです。カッシーナは北イタリアのミラノ近郊のメーダで、チェーザレとウンベルトのカッシーナ兄弟によってアメデーオ・カッシーナ 社として設立されました。当初は手工業的な生産でしたが、第二次世界大戦後にはカッシーナ社は外部のデザイナーとのコラボレーションを開始します。そして、1952年にジオ・ポンティとともに豪華客船「アンドレア・ドーリア」のインテリアを手掛けます。これを機に同社は大きく飛躍しました。そのような同社はサスティナブルな製品の開発にも着手しています。
カッシーナは2020年からミラノ工科大学と協働でCassina LABを立ち上げ、サスティナブルな商品の開発に取り組んでいます。その研究の成果として同社はSENGUソファに環境に配慮した100%再生繊維をクッションのパディングとして組み込んでいます。
そして、同社は製品開発以外の部分でも環境配慮の取り組みを進めています。例えば、同社は家具の製造を行う自社工場に、太陽光パネルを設置しており、これにより、工場で使用する電力の約66%を自然エネルギーで賄っています。さらに、革や布の端材をノベルティグッズにアップサイクルし、店舗間輸送時に使用している梱包材とその運用の見直しをおこなっています。
ミラノサローネでも見られる環境配慮のトレンド
今後のSDGs関連の家具のトレンドを把握する上で、参考になりそうなものがミラノサローネ国際家具見本市(以下ミラノサローネ)です。
ミラノサローネは1961年にイタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために誕生した家具の見本市です。2018年現在、ミラノサローネは6日間の会期に世界188か国から434,509人も集める家具の祭典となっています。そのような世界が注目するミラノサローネでも環境配慮に対する動きが加速しています。
例えば、2019年には多くのブランドが天然素材を使ったものを出展していますが、エルメスは細い竹と紙素材を用いたテーブルライトを出展しています。
出典:ミラノサローネに見た天然素材インテリアの進化 | KAJA
他にも下のような大理石を用いた照明が出展されています。
出典:ミラノサローネに見た天然素材インテリアの進化 | KAJA
さらに、2021年には「supersalone」という特別展が企画されました。この特別展の大きなテーマに「持続可能性の概念と、再利用、リサイクル、循環性の問題」が掲げられました。この特別展では以下のようなものが展示されました。
1つ目はデンマークのバージット・デゥー・マドセン氏のオニキスという石の端材を用いて作られてたサープラスチェアです。
続いて、オランダのステファン・ショルテン氏は各国の大理石の産地の端材を利用して作ったテーブルを出展しました。
出典:Studio Stefan Scholten — The Stone House
このように世界最大規模の家具の祭典でもSDGsを主軸にした特別展が開催されるようにSDGs関連の家具に対するニーズは今以上に高まっていきそうです。
おしゃれなワンランク上の空間を作りたい方へ
この記事を読まれている方の中には環境に配慮した家具が欲しいという方も多いと思います。なので下では上記で取り扱ったカールハンセン&サンやカッシーナ以外の環境に配慮した製品や取り組みを行なっている家具ブランドをご紹介したいと思います。
フリッツ・ハンセン
まずご紹介するのは今年で創業150年となるデンマークのフリッツ・ハンセンです。フリッツ・ハンセンの始まりは1872年に家具職人として修行を終えた彼がデンマークのナクスコウという小さな街から首都コペンハーゲンに移住して立ち上げた小さな工房です。そこから順調に成長していき、1929年までにはクリスチャンポー城やコペンハーゲン市庁舎、最高裁判所などを手掛けるようになります。そして現在フリッツ・ハンセンの製品は世界85カ国、約2,000箇所の販売拠点で販売されるまでに至りました。
そのようなフリッツ・ハンセンの環境配慮の取り組みの一環として作られた商品にN02™リサイクルという製品があります。同製品は家庭から出た廃プラスチックを中央ヨーロッパで収集、処理、アップサイクルしたものを使用した再リサイクルが可能な製品です。
出典:N02™リサイクル
ハーマンミラー
続いてご紹介するのはハーマンミラーです。1905年に設立されたスター・ファニチャー・カンパニーという会社がハーマンミラーの起源です。1909年、同社にD.J.デプリーという人物が事務員として採用されます。その彼が10年後の1919年にスター・ファニチャー・カンパニーからミシガン・スター・ファニチャー・カンパニーに改称した同社の社長に就任します。その後、D.J.デプリーの義父のハーマン・ミラーがミシガン・スター・ファニチャー・カンパニーの過半数の株を購入。その後ミシガン・スター・ファニチャー・カンパニーをハーマンミラー・ファニチャー・カンパニーへと改称しました。このような小説に出てくるようなサクセスストーリーを伴うハーマンミラーですが、現在プラスチックゴミの削減に注力した取り組みを行なっています。
同社は、2030年までに海洋プラスチックを含むリサイクル素材の使用率を50%にすることを目標に掲げています。その目標を達成するための代表例がアーロンチェアの一部に海洋プラスチックを利用する取り組みです。
同製品は海岸から50km以内の陸地で不適切に処理され、海洋に流出するおそれのある「Ocean Bound Plastic」と呼ばれるプラスチックを一部に取り入れています。同商品の新色「オニキス」には海洋プラスチック1.13kg分(ペットボトル換算で約114本分)が使用されています。そして、今後展開される「グラファイト」「カーボン」「ミネラル」の全てのカラーバリエーションでも226.8g~1.13kg程度の海洋プラスチックを利用して製造を進めていく予定です。
カリモク
出典:CT61モデル | ダイニング | 家具を探す | カリモク家具 karimoku
最後にご紹介するのはカリモク家具です。カリモク家具は終戦から2年後の1947年に設立された愛知県の家具ブランドです。設立当初は自社での家具の製造は行なっておらず、紡織機を梱包する箱の製造を行なっていました。そこから1959年になり輸出家具の木製部の生産を開始し、1962年になって自社製品として家具の生産と販売を開始します。そして現在では全国27ヶ所に事業所を構えるに至っています。下ではカリモクの製品や取り組みについて2点ご紹介いたします。
1つ目にご紹介したいのはカリモクの木の利用方法です。利用する木に関してですが、彼らもカールハンセン&サンと同様にFSC認証を取得しています。そして最大限木を廃棄しないように工夫しており、例えば小さな木材もフィンガージョイントとして利活用しています。さらに、端材に関しても廃棄することはせずバイオマスボイラーの燃料として活用しています。
下は小さな材を加工して作ったフィンガージョイントです。
出典:環境|【公式】カリモク家具ホームページ|karimoku|木製家具国内生産メーカー
下はバイオマスボイラーと端材を燃料として利用している様子です。
出典:環境|【公式】カリモク家具ホームページ|karimoku|木製家具国内生産メーカー
2つ目は彼らの家具の長寿命化に対する取り組みです。例えば、彼らは修理パーツを販売しており家具の一部が破損した場合でもそのパーツを使って修理を行います。さらに、全国の拠点にサービス工場を設置し、専門のサービススタッフが修理対応を行っています。
詳細としては2019年の家具修理件数が4,731件、修理パーツ販売件数が3,349件にも及びます。
urgent undoの取り組み
最後に弊社の環境問題に関する取り組みを2つ紹介したいと思います。
1つ目の取り組みはデニムの製造過程で発生した端材をアップサイクルして作った素材を活用した家具の開発です。
近年ではファストファッションなどで安価な衣類が大量に生み出される中で、買い替えのサイクルも短くなっており、多くの衣類がリサイクルされずに廃棄されています。その廃棄の量はとても多く、一日あたり約1,300t にも上り、そのうちの95%は焼却処分になっています(環境庁調べ)。この社会課題を解決する一つのソリューションとなるよう開発したのが今回の素材です。
弊社の家具には和紙漉きの技術を応用してアップサイクルしたデニムの端材を使用しています。これにより、製造過程でゴミになるはずだったデニムの端材を有効活用しています。下はその端材をアップサイクルして作った家具です。
2つ目の取り組みとしてお客様に長く家具を使っていただくための商品割引制度の導入です。
具体的にはお客さまが弊社の家具をご購入された際、1年で1%、10年で10%、100年で100%と、使った年数に応じて次回購入いただく商品を割引させていただくプログラムをご用意させていただいています。弊社はこの制度をお客様にご活用していただいて、家具を長く使った後に新たな家具を購入いただければと考えております。
弊社の商品についてはぜひこちらでご確認ください。